vol.44(2016.7)【特集】

特集 城間圭亮 夢への第一歩を踏み出して

4月より、車いす陸上の城間圭亮選手がシーズアスリートに加入した。

地元沖縄を拠点に競技と仕事の両立に励みながら、2020年東京パラリンピックでの金メダルを目指す若干20歳の新鋭。

その素顔と、内に秘める想いに迫った。

林 敬起=文


城間圭亮 (しろま・けいすけ) 

1996年3月21日生まれ、沖縄県在住。

先天性の二分脊椎症により両足に麻痺が残り、日常生活では車いすを使用。小学校5年の時アスリート工房の下地隆之コーチと出会い、車いす陸上に取り組む。2013年、アジアユースパラ競技大会で日本代表に初選出、100・200・400・800mで金メダル獲得。2015年、大分国際車いすマラソン大会ハーフマラソン6位入賞。2016年、SOLA沖縄保健医療工学院卒業。マスミューチュアル生命保険株式会社社員。

 


自己紹介を兼ねて、ご自分の性格をひとことで表現すると?

すごく負けず嫌いです。大会で負けると、ほかの誰よりも悔しがっていると思います。そうした性格をもっと実際の走りに活かしていきたいです。

 

自分が思う一番の長所は。

笑顔です。いつも周りを明るく巻き込もうと心がけていますし、どんな時でも笑顔で乗り越えていける自信があります。

 

陸上以外では、何をしている時が一番楽しいですか。

三線を弾いている時です。琉球舞踊をやっていた祖母の影響で幼稚園生の時から弾き始め、“マイ三線”も持っています(※中学3年時に琉球新報社主催の琉球古典芸能コンクールの三線野村流部門で新人賞)。古典に限らず音楽鑑賞が趣味で、ライブに出かけることもあります。

 

陸上を始めたきっかけは。

陸上短距離の選手だった母と、日常用の車いすでランニングをしているうちに速く走りたいと思うようになったんです。そして小学校5年生の時に現在も指導を受けている下地コーチと出会い、本格的に車いす陸上に取り組みはじめました。

 

短距離からマラソンまで幅広く出場していますね。

いろいろな種目を走って可能性や適性を試しているのですが、将来的には、尊敬するマルセル・フグ選手(スイス)も走るマラソンで勝負したいと考えています。

 

シーズアスリートへ加入することになったきっかけ、経緯は。

シーズアスリートの存在は知らなかったのですが、以前から面識のあった小西(恵子)選手に、地元にいながら競技と仕事を両立できると紹介を受け、2020東京パラリンピックでの金メダル獲得という夢を叶えるため決断しました。

 

社会人1年目も3カ月が経過。沖縄での在宅勤務と競技は、うまく両立できていますか。

両立といっても秋までの半年間は研修期間で、(株)チャレンジド・アソウの支援のもと、スカイプを通じてパソコンのワードやエクセル、ビジネスマナーなどを学んでいる段階です。まだ緊張してばかりで、少しずつバランスをとっている状況です。

 

シーズアスリートの新卒採用第1号というプレッシャーは。

期待に応えられるのかという不安は少しありますが、社会人としても競技者としても一歩ずつ成長していきます。

 

4月の中国遠征では100・200・400・800メートルの4種目に出場。収穫と課題は。

海外遠征の経験が少ないので、あらゆる面でとてもいい勉強になりました。反省点は、緊張したことで練習の成果を十分に出せず、課題であるスタートからの加速を含めて納得のいく走りができなかったことです。

 

緊張しやすい?

音楽を聴きながらストレッチをしたりしていると一時的には落ち着くのですが、レースが近づくとまた緊張してしまうことがあるんです。経験を積んで自分にもっと強くなりたいです。

 

会員の皆様にメッセージを。

このたびは、素晴らしい環境とチャンスをいただき本当に感謝しております。競技も仕事も手を抜かずにしっかりと両立し、ひとりでも多くの方々に勇気や元気を与えられる選手を目指していきますので、どうぞよろしくお願いいたします。

インタビュー後記

「緊張しました」。取材を終えた城間選手は、そう言って苦笑いを浮かべた。緊張することは、一般的にマイナス要因と捉えられる場合が多い。だが、適度な緊張は集中力を高め、身体能力を引き上げてくれる。アスリートにとっては、よりよいパフォーマンスを発揮する大きな原動力となり得るのである。城間選手が緊張を味方につけることができるようになれば、4年後の東京で一番輝く色のメダルを手にしているかもしれない。今後の“覚醒”が楽しみだ。(林)


はやし・たかき=文

フリーライター。1969年福岡県出身。2000年「月刊ホークス」誌の創刊に参画。以後、福岡ダイエーホークスおよび福岡ソフトバンクホークスファンクラブ会報誌、オフィシャルイヤーブック、「スポーツ報知」紙などで記事を執筆。