特集 シーズアスリート新春座談会 新たな挑戦と覚悟

パラリンピックイヤーを経て、それぞれの想いを胸に、シーズアスリートの8選手が再び動き始めようとしている。
自らを見つめ直し、勢ぞろいした仲間にエールを送りながら、新たな挑戦について和やかに、ときに真剣に語り合った。

林 敬起=文


2016年を振り返って

皆さんにとって2016年はどんな1年でしたか。総括をお願いします。

川野
 シーズアスリートの仲間と共にリオパラリンピックに挑んだ1年でした。出場選手は結果を残すために頑張り、出場できなかった選手は出場選手のサポートをするというように、全員で一丸となってチームワークを発揮できたと思います。個人的にはメダルを逃して気持ちが落ち込みましたが、会員様をはじめ多くの方々から次につながる叱咤激励の言葉をいただき、絆の大きさをあらためて実感しました。

小宮
 選手としてリオの舞台に立たせていただき、会員様をはじめ支えてくださった方々に心から感謝しています。仕事も競技も、次の一歩を踏み出して自分自身を高めていく作業は、苦しさも伴いますが自分の新たな可能性を知る楽しさを見出すことができました。そして、ゴールボールが好きだということをあらためて感じた1年でした。

副島
 パラリンピック出場に向けて一番苦しく、辛抱を重ねた1年でした。年を追うごとに後輩の成長をプレッシャーに感じるようになり、自分はどうするべきなのかと悩む機会が増えました。特に昨年は土壇場までリオの出場権を取れなかったこともあって、勝つために努力したというより、不安やプレッシャーに負けないようにという守りの気持ちが強くなってしまった。そして本番でも、すべてを出し切ったという晴れ晴れしい気持ちになれなかった。いろいろと悔いが残る年でしたね。

浦田
 世界の頂点に挑むチャンスを再びいただいて、大きく成長することができた幸せな1年でした。連覇は果たせませんでしたが、ミスも含めて自分の力や練習の成果を出し切ったという思いはあります。とはいえ、やはりすごく悔しい。職場でもそうですが、自分が組織にどう働きかければいいのか、私らしさを発揮できているのかといったことを考えさせられ、チームが本当にひとつになることの難しさを感じた年でもありました。

信沢
 個人のスキルアップを図るつもりが個人プレーに走ってしまい、自分がやっているゴールボールと目指すべきゴールボールにギャップが出てしまい、自分のプレーもチームプレーも見失うことが多い1年でした。チームでの自分の立ち位置や役割をあらためて見極め、必要なスキルを磨いていきたいです。

小西
 リオパラリンピックへの道のりは厳しく、選手として大きく飛躍しなければ、リオの舞台には届かないことを理解したうえで、リオを目指しました。結果的に実力が及びませんでしたが、若い選手にまだ負けたくない、もっと速く走りたいという思いがあります。一方で、城間君を含めて後輩に対してできることがあれば取り組んでいきたいという気持ちも芽生えた1年でした。

城間
 シーズアスリートの一員として社会人となり、人生が大きく変化した1年でした。目標は仕事と競技の両立だったのですが、仕事からトレーニングへの切り替えがうまくできなかったので、これから上手にバランスをとっていきたいです。また試合で緊張しやすいので、メンタル面を鍛えて思いどおりの走りができるようになりたいとも強く思いました。

工藤
 選手としての活動より、小宮さんと浦田さんが世界一になるためのサポートを優先しました。連覇はできませんでしたが、一緒に取り組んできた成果をコートで発揮してくれたという達成感がありました。自分にとってのリオが終わり、これから自分が進むべき道について自問を続けた1年でした。

 

リーダーとしてはどうでしたか。

工藤
 会員様が期待していた結果をリオで残すことができなかったので、新たに加入した城間君には社会人として、競技者としてシーズアスリートの良さを結果で証明してもらいたいですし、自分たちもこれまで以上に結果にこだわらないといけないと思いました

 

 

先輩から、期待の新星へ

緊張しやすいという城間選手へのアドバイスをお願いします。

工藤
 不安や後悔が緊張の原因なので、試合までやれるだけのことをしっかりと積み重ねてその場に立ち、いかに腹をくくれるかだと思います。メンタルに関する本を読むのも参考になりますよ。

浦田
 私は、戦う相手は同じ人間なので、緊張してもムダだ!(笑)と思っていますよ。試合前にみんなで声に出して言ったこともあります。

小宮
 試合前は良いイメージを持つように心がけています。城間君は緊張すると言いますが、逆に強いほうではないかと(笑)。

小西
 絶対に緊張を力にできるタイプですよ。一緒に出場した大会でも私が近くで、それも大声で応援していたのですが、目つきがガラッと変わっていて見向きもせず、ゴール後もさっと通り過ぎていきました(笑)。それだけ集中できているということだと思います。

工藤
 研修のときに人前で“ちょっと歌って”と言ったら、5曲くらい歌いましたしね(笑)。

一同
 (笑)

副島
 私はスタート3分前くらいが最も緊張しますが、何も考えないようにして、親しい選手に“頑張ろう”と話しかけることもあります。あとは開き直るだけですね。ちなみに一番緊張するのはいつ?

城間
 スタート前です。

副島
 前の日は普通に寝られる?

城間
 はい、寝られます。でも試合前は緊張しています。

一同
 (笑)

副島
 前の晩に寝られるくらいなら、大丈夫、問題なし!(笑)

 

(笑)もうひとつ、仕事と競技の両立についてもアドバイスを。

信沢
 多分、この中で私が一番、両立が下手なんですよ(苦笑)。大会が近づくと仕事中に競技のことが気になり、競技中は仕事が気になってしまうので、一方のことは忘れようと言い聞かせています。

小宮
 工藤さんや川野さんは、大会に出るために仕事の計画を立て、終わらせなければいけないことを明確化して実行している。だからこそ、競技に集中できていますよね。私も見習わなければ(苦笑)。

川野
 シーズアスリートで競技を続けようと決断したときに、組織の理念に沿った考え方、動き方に切り替えたことで、スムーズに両立できたように思います。とにかくひとりで悩まず、仲間に相談することじゃないかな。チームとしてお互いを支え合う意識があれば、みんながうまく両立できるはずです。

工藤
 両立とは時間的なことではないと思うんですよ。仕事が終わっても定刻まで職場にいる、在宅勤務であれば家にいるのはナンセンス。仕事が終われば早く退社し、終わらなければ続ける。つまり責任がフィフティーフィフティーであって、状況によって時間的なバランスが変わる、と考えれば両立しやすくなるかもしれません。

 

城間選手、いかがですか。

城間
 まだ学ぶことも覚えることも多くて要領をつかめていないし、自覚や責任感も足りていなかったのかなと反省しています。メンタル面も含めて、これからいろいろと相談させていただきます!

 

 

2017年、再スタートのとき

それでは、今年の抱負と意気込みをお聞かせください。

浦田
 抱負は「基本に立ち返る」です。パラリンピックという節目の年を終えて、今まで積み上げてきたものをゼロにするという意味ではありません。今までやってきたからそのままでいいということではなく、体づくりやチームづくり、そして仕事においても、いま取り組んでいることは何のためにするのか、本当に必要なのか、といったことをフラットな状態でもう一度しっかりと考えるようにしていきます。

信沢
 「あつく高く、そして強く」です。だれかのために頑張りたい、必死になって勝ちたいという気持ちをチームメートと共有し、 感情が表に出るような熱いプレーをしたい。その中でお互いに成長しながら強いチームをつくっていきたい。そうした思いを目標にしました。そのためにも、先ほども言ったように自分の立場や役割をあらためて見つめ直していきたいです。

小宮
 試合前は良いイメージを持つように心がけています。城間君は緊張すると言いますが、逆に強いほうではないかと(笑)。

小西
 抱負は「万能一心」(※何をするにも心を集中しなければならないこと。どんなことをこなせても真心が欠けていれば何の役にも立たないこと)です。リオを終えて、心技体の心が特に足りていないと感じました。仕事や競技の一つひとつに真心をもって取り組み、人に対しても同様に接することで自分をもっと高めていきたいと思い、この言葉を選びました。代表チームがより強くなるために自分が何に貢献できるのかをしっかりと考え、整理した上で次のステージに挑戦していきます。

川野
 「動く!そして変わる!」です。自ら動いて新たなことに挑戦し、何かを変えていかなければ現在の地位を守れないし、進化や成長もありません。たとえば、テニス以外の競技の練習を取り入れてみるなど、これまでと違う視点を持ち、異なる分野から刺激や気づきを得たいと思っています。仕事もプライベートも同じで、自分にできることをもっと考えて行動することでより大きな楽しみを見出し、明日に期待を持てる日々を過ごしていきたいです。

工藤
 抱負は「緊褌(きんこん)一番」(※気を引き締め、十分な覚悟をもって事にあたること)です。チームの勝利を最優先し、2020東京でメダルを狙える実力をつけていくためには、自分がコーチと選手のどちらの立場でいることがより貢献できるのかをしっかりと考え、結論を出します。どちらにしても、覚悟して選択しなければ悔いが残ると思って目標にしました。

 

シーズアスリートとしては。

工藤
 2020東京だけでなく、その先も見据えて若手選手を発掘し、1年に1人の加入に繋げていきたいです。会員様にこれからも長く応援してもらえる組織にしようという気持ちを、全員がこれまで以上に持つ必要があると思っています。

 

どんな選手が理想ですか。

工藤
 将来性なども大事ですが、応援したいと思ってもらえる魅力を持つ人がいいですね。人柄なのか、副島さんのようなカリスマ性なのか、魅力は人それぞれですが。

副島
 そんなものないよ(笑)。

工藤
 車いすに乗っていれば普通の人、でもレーサー(※競技用車いす)に乗るとカリスマ性を発揮するという(笑)。

一同
 (笑)

副島
 ひどいなあ。まあ、否定はできませんけど(笑)。

 

そんな副島選手を前に緊張気味の小西選手、お願いします。

小西
 副島先輩の前で話すのはちょっと震えますが(笑)、「継続こそ変化の近道」です。すごく大きなことに取り組むより、基礎的な練習を地道に、納得できるまで努力し続ける方が大きな変化につながると思って目標にしました。もっと速くなりたいし、まだ速くなれるのではないかという根拠のない思いもあって、あきらめきれないという気持ちです。

副島
 私も根拠のない自信だけでやってきましたから(笑)。自分の自信やプライド、ポリシーを持つ者同士が戦う世界で正しい答えなんてありません。だからこそ、いろいろな選手のさまざまな部分を見たり聞いたり、取り入れたりして自分に適したものを選んでいけば、根拠のない自信が花開くこともあるでしょう。ネガティブに考えるより、よほどいいと思いますよ。

 

川野選手の抱負にも通じますね。

川野
 根拠はなくてもいいと思えば試してみればいいし、だめだったらもうやらなければいい。でも、必ず発見はあるはずですからね。

小西
 ありがとうございます。先輩方の言葉をヒントに、自分に合う方法を見つけていきます。

 

城間選手の抱負は小西選手と似ていますが、まさかカンニング…

城間
 してないです!(笑)。抱負は「努力の積み重ねが夢を叶える近道」です。皆さんのようなトップ選手になって2020東京では、会員様に結果で恩返しをしたい気持ちが強まりました。しかし、思いどおりの走りができず、結果に繋がらないことも少なくありません。継続して努力を積み重ねることが力を発揮するために必要だと思っています。

副島
 私の抱負は「向上」です。これから先、自分自身の努力とキャリアだけで実力を伸ばすことはかなり難しく、伸びるにしても限界があります。だから川野君と同じように、伸び盛りの若手の考えや取り組みを参考にしながらケガをしない体づくりに励み、2020東京に挑戦します。とても厳しい4年間になることは覚悟していますが、私は選手でありたいし、多くの人に応援してもらえる選手を送り出していきたいと思っています。

 

最後に、リーダーとしてメンバーへメッセージをお願いします。

工藤
 新たな目標に向けて最善を尽くし、結果を追求してください。会員様からもっと応援していただける選手であるため、そして自分が“実はもっとやれたかも”と後悔しないためにも恵まれた環境を当たり前に思わず、取り組んでいることを常に振り返りながら、その日できることに最大限の気持ちで取り組んでいきましょう!

一同
 はい!

「緊張しました」。取材を終えた城間選手は、そう言って苦笑いを浮かべた。緊張することは、一般的にマイナス要因と捉えられる場合が多い。だが、適度な緊張は集中力を高め、身体能力を引き上げてくれる。アスリートにとっては、よりよいパフォーマンスを発揮する大きな原動力となり得るのである。城間選手が緊張を味方につけることができるようになれば、4年後の東京で一番輝く色のメダルを手にしているかもしれない。今後の“覚醒”が楽しみだ。(林)


はやし・たかき=文

フリーライター。1969年福岡県出身。2000年「月刊ホークス」誌の創刊に参画。以後、福岡ダイエーホークスおよび福岡ソフトバンクホークスファンクラブ会報誌、オフィシャルイヤーブック、「スポーツ報知」紙などで記事を執筆。