特集 「きずな」を力に変えて


 

山下慎治
"絆"とともに、さらなる高みへ

4月より、視覚障害者マラソン山下慎治選手がシーズアスリートに加入した。競技歴4年目の34歳にして、日本歴代7位の自己ベストをマーク。2020年東京パラリンピックに向けて大いなる可能性を秘めた山下慎治選手の素顔とはー。

ーフルネームを知ったとき、同姓同名俳優さんを思い浮かべました。 

よく言われます(笑)。漢字は違いますけどね。山下真司さんといえばラグビーのテレビドラマ「スクールウォーズ」が有名ですが、私も小中高とラグビーをしていたので無関係というわけでもないんです(笑)。

 

ースポーツ少年だったのですね。

スポーツ全般、特に球技が好きで、一番得意な科目も体育でした。

 

ー自分の性格をひとことで言うと?

物事をあまり深く考えてないタイプ。人からは「A型」とよく言われます。特に几帳面ではないのですが(笑)

 

ー網膜色素変性症と診断されたのは高校卒業後。どんな心境でしたか。

小学校の頃から鉛筆や消しゴムなどの小さなものを落としたときに、自分では見つけられない、夜になるとほとんど見えずに外を歩けないなどの症状があったので病名を診断されたことで逆に納得できた部分がありました。人より見えてない程度の受け止め方で、性格的にも落ち込んだり引きこもったりすることはなかったです。

 

ーマラソンを始めたきっかけは。

ヘルスキーパーを目指すきっかけにも通じるのですが、ゴールボール女子が2012ロンドンパラリンピックで金メダルを獲得したことです。もともと50%程度だった視覚次損が95%まで達していた時期だったので、見えなくてもスポーツが出来るというのは希望でもありました。将来を考え、ヘルスキーパーになるための資格を取得しよう、ゴールボールをやってみよう、と福岡視覚障害センターへ通うことを決めました。

 

ーゴールボールが先なんですね。

はい。その後、体力強化とダイエットのため走り始めて半年ほど経ったころ、網膜色素変性症の患者会で大濠公園ブラインドランナーズクラブの存在を知りました。その練習会に初めて参加したとき、伴走者から「それくらい走れるならフルマラソンに挑戦してみたら?」と言われたんです。久しぶりに外で走って気持ちが良かったこともあり、一度くらい挑戦してもいいかなと思って、半年後の大会(さが桜マラソン2014)に向けて練習を本格的に開始しました。

 

初マラソンの手ごたえを感じた?

9割程度で走って3時間25分だったので、もう半年しっかりトレーニングすれば、強化指定選手の選考基準の3時間を切り、競技者として可能性が広がると思いました。

 

選手として夢、目標は。

2020東京パラリンピックでのメダル獲得です。同じランナーズクラブで尊敬する2016リオパラリンピック銀メダリスト、道下選手に続きます!

 

自己ベストは2時間47分49秒。日本歴代7位の記録ですね。

2時間半を切ればパラリンピックのメダル圏内と見ています。今年の目標は2時間40分。伴走者不足と練習場所の確保という課題はありますが、1年で5分ずつ縮めていきたいです。

 

夢を追求できるのも、伴走者などサポートしてくれる方がいればこそ。

視覚障害者マラソンはチームスポーツなんです。伴走者がいなければ練習もできないし、大会での行動はすべて一緒で、競技中に伴走者に何かあればリタイアすることもあります。まさに一心同体でテニスのダブルスのように共に戦う競技者、パートナーなので、走る際にお互いをつなぐロープを絆と呼ぶのです。

 

シーズアスリートの一員として、ヘルスキーパーとしての新生活は。

仕事と競技を両立できる理想的な環境だと思います。毎日いい雰囲気の中で、いい刺激を受けています。鍼灸マッサージ師の資格は3年かけて取得したばかりですが、お客様に満足して帰っていただきたいという心で仕事に取り組んでいます。

 

会員の皆様にメッセージを。

ご厚意をしっかりと受け止め、結果を残すことで恩返しをしていきたいです。ご声援よろしくお願いします。伴走に興味を持っていただけましたら是非お気軽にシーズアスリートへお問い合わせください。伴走者が不足していて、走りたくても走れない視覚障害者も大勢います。練習は常に全力ではなく、ジョギング程度の日もありますので、一緒に走ることができたらうれしいです。


 

Match Blind marathon (視覚障害者マラソン)
4月16日 かすみがうらマラソン兼国際盲人マラソン大会2017(茨城県/土浦市)

状況に左右されず実力を出し切れる選手に

ーResultー

(種目)10マイル(約16・09㎞)(結果)順位2位/13名(10マイル盲人男子の部) 山下慎治 1時間01分13秒

2月末に鍼灸マッサージ師の国家資格試験を控え、十分に走り込むことができないと分かっていたので、フルマラソンではなく10マイル(約16㎞)に出場しました。大会当日は気温25度の夏日でコンディション的にも厳しく、1時間を切るという目標を達成することはできませんでした。

しかし、リオパラリンピックのマラソン銀メダリストで国内歴代1位の記録を持つ岡村正広選手は、同じ状況下でも大会記録で優勝しています。暑さが厳しいであろう2020東京もそうですが、状況に左右されず実力を出し切れるスポーツ選手にならなければ、と強く実感しました。一方で、岡村選手との現時点での差を確認できたこと、また自己ベストが私とあまり変わらず、ひとつの基準あるいは目安にしているライバル選手に勝って2位だったことは収穫でした。(山下慎治)


はやし・たかき=文

フリーライター。1969年福岡県出身。2000年「月刊ホークス」誌の創刊に参画。以後、福岡ダイエーホークスおよび福岡ソフトバンクホークスファンクラブ会報誌、オフィシャルイヤーブック、「スポーツ報知」紙などで記事を執筆。